証言作成や契約分析をAIで効率化——Thomson Reutersが6.5億ドルで買収したAI法律事務所「Casetext」の展望

Image Credits: Casetext

証言作成や契約分析をAIで効率化——Thomson Reutersが6.5億ドルで買収したAI法律事務所「Casetext」の展望

uniqorns編集チーム 2023.07.08

米国のAI法律データベース「Casetext」が今年6月に、メディア大手 Thomson Reuters から6.5億ドルで買収された。30年の経験を持つ弁護士 Schwartz 氏が、裁判資料作成にAIを利用することで、架空の事件を事実として扱う事例が報告されている。これはAIと法律が役立たない訳ではなく、使い方が問題だと言える。

Casetextは、アメリカ最高裁判所と全50州の主な判決履歴を持ち、AI技術を利用し、法律分析、証言作成、判例探しを弁護士に支援している。これにより、弁護士が法律文書を探す時間を大幅に節約できる。Casetextは2013年にアクセラレーターY Combinatorに採択され、その後の成長を遂げるに至った。

Thomson Reutersは既に「Westlaw」という法律データベースを保有しており、Casetextとの深い連携が予想されている。これにより、AI分野におけるThomson Reutersの存在感は一層高まると見られる。

Casetextは数年をかけてAI技術を導入し、2018年に「CARA AI」を発表した。ユーザが法律文書をアップロードすると、CARA AIが関連する他の文書を検索し、既存の法律文書データベースLexisNexisよりも20%早く検索できるようになった。

2023年3月、CasetextはGPT-4モデルを導入したAI法務アシスタント「CoCounsel」を発表した。CoCounselにより、法律文書のチャット感覚での検索や、法律調査、文書レビュー、宣誓証言の準備、契約書分析といったタスクをAIに任せることで、弁護士はより重要な仕事に集中できるという。

CasetextのAIアシスタントは主にデータ検索に使われ、内部データと外部データの2つの用途に分かれている。内部データでは、ユーザはまずPDFファイル内部データでは、ユーザはまずPDFファイルをCoCounselにアップロードする。その後、AIは文書を読み込み、主要な事実、法律理論、事例を抽出し、それをベースに関連する法律文書を検索する。また、ユーザは特定の質問に対するAIの回答をリクエストすることも可能である。

外部データの用途では、CoCounselはクラウドベースのストレージシステムから法律文書を取り込むことができ、それらの文書を分析して関連する情報を提供する。

Thomson ReutersのCasetext買収は、AI技術が法律業界における意思決定を劇的に改善する潜在能力を示している。特に、証言作成や契約分析といった時間と労力を要するタスクをAIに任せることで、弁護士はより重要な業務に集中できるとされている。

しかし、AIのこの種の利用は問題も引き起こしている。たとえば、AIが事実と架空を区別する能力には限界があり、誤った情報を結論として出力する可能性がある。弁護士は、AIが提供する情報を盲目的に信用せず、その精度と信頼性を常に確認する必要がある。

Casetextの今後の展望としては、既存の法律データベース「Westlaw」を運営するThomson Reutersとの深い統合が見込まれている。また、AI技術の進化に伴い、さらに多様なタスクを効率的に処理できる可能性がある。これにより、法律業界は大きな変革を迎えるかもしれない。